エンジンブレーキ

エンジンの運転には常に損失が伴い、排気の熱として逃げる「排気損失」、冷却水へ熱が逃げる「冷却損失」、機械的な摩擦やオイルの撹拌で生じる抵抗の「機械的摩擦損失」、吸排気の流体抵抗として生じる「ポンプ損失(ポンピングロス)」に分けられ、このほかに輻射によるエネルギー散逸や未燃焼分の熱量消失が含まれる。

また、エンジン単体としてではなく自動車などに搭載された状態では、オルタネーターなどを駆動するエネルギーとして消費される「補機類駆動損失」も生じる。

このうち機械的摩擦損失、ポンピングロス、補機類駆動損失ならびに冷却損失の一部はエンジン回転の抗力として作用し、走行中に駆動輪とのトルク伝達を維持したままエンジン出力を下げると、車両には減速力として作用する。

この状態をエンジンブレーキという。

ポンピングロスは吸気や排気の流れに生じる抵抗で、気体の流れが速いほど抵抗が大きいことから、エンジンの回転速度が高いほど大きくなる。

特に、スロットルバルブを有するエンジンにおいては、エンジンの出力を下げるためにスロットル開度を小さくするほどスロットルバルブでの抵抗が大きくなり、エンジン回転の抗力のなかでポンピングロスが大きな割合を占める。

したがって、エンジンの回転速度が高いほど、あるいはスロットル開度が小さいほど、エンジンブレーキの作用は強くなる。

また、排気量が大きいほど吸入空気の体積が大きいので、スロットルを絞った際の抵抗が大きくなり、エンジンブレーキの作用が強くなる。

一方で、ディーゼルエンジンのようにスロットルバルブによる出力調整を行わないエンジンはスロットルバルブでの抵抗が生じないため、その分だけエンジンブレーキの作用が弱い。

また、減速比が高いほどエンジンの回転抵抗がより大きく増幅されて車輪に伝わるため、トランスミッションで低いギアが選択されているほどエンジンブレーキは強く作用する。

Link List